―市川市の大町自然公園で奇跡の開花をみるー


市川市大町にある自然観察植物園にはよく散歩に出かけるが、今年の夏、珍しい植物の開花を見ることができた。名前は“アオノリュウゼツラン“。 大町自然園内にある「観賞植物園」の中庭に幾つか植わっているリュウゼツラン株一つの開花である。これが5月後半から茎を伸ばし始め、6月には7メートル近くに枝が成長、やがて、つぼみをつけ、枝下部から花が徐々に開き、7月下旬には満開となり見事な花をつけていった。

このリュウゼツランは南米の原産といわれており、開花するのは非常に珍しい。数十年に一回しか花が咲かず、あとは枯れてしまうという植物である。公園や川沿いには時々植えられているのを見るが、日本では花をつけた姿はまず見ることはできない。
今年夏、この貴重な植物の開花を見ることができたのは非常に幸運だった。 今回、この珍しいリュウゼツランの成長と開花、実をつけ、季節が変わるにつけ萎れていくまでの様を写真に撮り、時間を追って画像にしてみたのがこの観察記録である。2022年夏の一風景であるが、私にとって忘れがたい思い出となった。 資料を参考にした「アオノリューゼツラン」の概要とともに、ここに紹介してみる。
♣ “アオノリューゼツラン”(青の竜舌蘭)とは

アオノリュウゼツランは“竜舌蘭“の一種。メキシコを中心に米国南西部と中南米の熱帯域に自生するほか、観葉植物として広く栽培されているという。和名に「蘭」とつけられているが、ラン科植物ではない。日本ではリュウゼツランあるいはアガベの両方で呼ばれることが多いという。


この植物は、数十年をかけ成長したのち、1度だけ花を咲かせ枯れてしまう特異な植物である。 栄養成長期に葉を次々に出して栄養を貯めていき開花の準備を重ねる。原産の熱帯地域では栄養成長期が10-20年にわたり、その後開花する。日本では30-50年で開花といわれているが、確かなことはわからない。 開花期になると「生殖成長」へと切り替わり、葉から花茎へと養分の転流が起こり、下の葉から枯れ始めると同時に花茎が急成長し花をつける。花茎は1日に10cm程成長、2ヶ月ほどで大きいもので高さ10mにもなり数千の花をつける。花は下の方から咲き始めるようで、それぞれの花では雄しべが枯れ始めると雌しべが成長。夜間に大量の蜜を分泌するとの観測があり、受粉との関係が指摘されている。(リュウゼツラン属 – Wikipediaより)
♣ 観賞植物園で十年ぶりに開花したアオノリュウゼツラン

ところで大町自然公園にあるアオノリュウゼツランは、1993年に4株植栽された中の1つで、2012年に2株、2017年に1株開花している。そして、今回が最後の株の開花となった。次回、花が咲くとしたら早くて10年後以降といわれる。今年5月、葉の中心部より花茎が伸び8メートル程度まで成長し、夏に開花した。https://www.city.ichikawa.lg.jp/zoo/0000402573.html
○ 市川市ホームページでアオノリュウゼツランの開花予想を報道

私の観察でも、今年6月はじめに成長が確認され、下旬につぼみが目立ちはじめ、7月中旬から下旬にかけて一部が開花、8月初めには満開になっている。そして、9月に入ると花はしぼみはじめ、11月には花弁の部分に実らしきものがつき、枝は枯れ始めている。
このようにアオノリュウゼツランは、成長から2ヶ月のゆっくりしたサイクルで、成長、開花、花枯へと変わっていき、秋が深まると同時に貴重な夏ドラマを終わらせていく。次は、別の株による十数年後の開花を待たねばならないという。おかげで、今年の夏は貴重な体験をさせてもらった。
(以下は今年の熱帯花アオノリュウゼツラン転成の記録)



← 6月の下旬訪問した時、はじめてリュウゼツランの成長を確認でき、つぼみが僅かに小枝に付いているのを見ることができた


← 7月中旬になると伸びた枝に僅かな花芽がつき始め、下旬には早くも枝の下の方から黄色の見事な花が咲き出していた


←8月初旬にはとうとう満開になり全部の枝が黄色に染まった。見事な花である。右は花芽の一部をサンプルに展示したもの


← 8月下旬になると花の色はあせ始め、9月になると花は終わりを告げ、下の枝から萎れ始めた。約一ヶ月の花の時期はそろそろ終わりを迎える。



← 秋が深まっていくと花も勢いを失い、枝は下の方から枯れていく。同時に花弁部分に密を含んだ実が付きリュウゼツランが成熟と生成の終わりを告げる。木から落下した実はリュウゼツランの種となって次の成長を待つことになる。
おわりに

今年、期せずして希少植物アオノリュウゼツランの開花を観察できた。数十年に一度しか咲かないという珍しい植物である。大町自然公園に散歩には出かけるが、これに巡り会えたのは望外のことであった。道ばたや川沿いでよく見かける植物ではあったが、これが花を持つとは今まで知らなかった。園内には4株のアオノリュウゼツランが植わっており、スタッフが植物の手入れをよくやったいたようで、この20年間の間3株が開花している。そして、今回が最後の一株の開花だったという。次の開花はいつになるか不明とのことであった。今年の夏は非常に暑い日が続き、熱帯植物のリュウゼツランにとっては快適で、これが開花を促したのではないかとの園スタッフの弁である。私もこの珍しい開花観察を楽しみつつ訪問するたびにスマホのシャッターをきって記録していった。このブログを通じて、この希少な開花現象の変化を共有していただければ幸いである。今年、東京・調布市の植物園では、巨大熱帯植物「オオコンヤク」の葉と花が同時に出る珍しい開花が見られたということで話題になったが、今般の猛暑や異常気象現象などが、自然公園のリュウゼツラン開花や各種植生現象にも影響を与えているのかもしれない。ともあれ、もう二度と見ることはない ひと夏の思い出、アオノリュウゼツラン開花の記憶を大事にしたいと思っている。
(了)
参考にした資料:
- アオノリュウゼツランが咲いてます | 市川市公式Webサイト (ichikawa.lg.jp)
- 市川市】速報!激レア!数十年に一度。アオノリュウゼツラン開花まで秒読み~大町 鑑賞植物園~ – 4番ピッチャー | Yahoo! JAPAN クリエイターズプログラム
- 〝50年に1度〟開花の兆候 アオノリュウゼツラン 市川市動植物園で | 千葉日報オンライン (chibanippo.co.jp)
- 市川市動植物園 アオノリュウゼツラン | 散歩と銀盤 (ameblo.jp)
- 市川市動植物園 アオノリュウゼツラン – YouTube
- アオノリュウゼツラン – 植物図鑑 (botanica-media.jp)
- アオノリュウゼツラン(青の竜舌蘭)とは – コトバンク (kotobank.jp)
- 【数十年かけて咲く花】リュウゼツラン(アガベ)とは?種類別の花色をご紹介! | kurashi-no