犬山城下とカラクリ館を訪ねる

犬山城下町の魅力とカラクリ人形の匠技を見る

Inuyama- illust x01最近、機会があって愛知県の犬山市に行ってきた。ここには室町時代16世紀にInuyama- town x01創建された国宝「犬山城」があり、また、江戸期の城下の町並みや当時の人形神輿祭りの雰囲気を色濃く残している。私は、この犬山城の天守閣のほか城下にある犬山市文化史料館、カラクリ館などを訪ねてみた。糸組と歯車で自動的に動く“からくり人形”のInuyama- Doll x16博物館は特に興味深い。精密な自動人形製作の「匠技」は、後の日本の機械工作技術形成のベースになったともいわれている。そこには現在の日本の人型ロボット製作のコンセプトに生かされているという説明も納得できる。短い時間であったが、このような“カラクリ”人形の背景と魅力を堪能できたことは幸いであった。以下は、このときの印象とカラクリ館の概要を記したもの。

カラクリ館HP: Karakuri Pavilion HP : https://inuyama.gr.jp/karakuri.html

 ♣ 犬山城と城下町と祭り

Inuyama- illust x08 犬山城は、室町時代の1537年に創建された歴史的な城で、国宝にも指定されてinuyama- Museum x03いる。その天守閣は現存する城の中では日本最古の様式を誇っている。また、犬山城の城郭構造がそのまま維持され、城下も現在も江戸時代と変わらない町割り(町の区画)や風情ある古い商家の建物もいくつも残っている。また、この犬山で毎年開かれる犬山祭りは、壮麗な山車神輿の上で大型の曲芸カラクリ人形が演技を競うことInuyama- Float x03で全国的にも知られている。現在、犬山市の手で「歴史まちづくり」が進められ、犬山城と城下町に関する情報の発信基地として犬山市文化史料館、犬山祭りの山車を展示する「どんでん館」などが設立されている。そこでは、犬山の歴史、犬山祭の紹介を紹介されているほか、実際に犬山祭で使用される車山などを一般展示公開している。

 

♣ 犬山のからくり人形とは

Inuyama- illust x06「からくり」とは、日本における古い時代の機械的仕組みのことで、これを人形の形にして自在に動くようにしたものが「カラクリ人形」である。欧米のInuyama- Doll x17オートマタに相当するだろう。日本では「人形」は、古来「依り代」として生まれ神聖なものとされていたが、これが「からくり人形」の形となり、中世以降、祭礼などに使われるようになったという話である。特に、江戸時代から祭礼のほか、一般の見世物興行や娯楽にも使われるようになり広く普及した。

Inuyama- illust x07そして、江戸時代初期、17世紀頃から機械時計に使われていた歯車やカムなどの技術が人形を動かす装置として応用するようになるとカラクリの専門製作職人もうまれ、非常に精巧なからくり人形が作られるようになり、日本独自の発展をとげた。

 (Refer: http://karakuri-tamaya.jp/knowledge.html)

 

<からくり人形の普及の歴史>

Inuyama- Old doll x01 カラクリの縁源をたどると、元和6年(1620年)には、名古屋東照宮祭の山車に初めて「牛若弁慶のからくり人形」が乗せられ、中京圏を中心としてからくり人形を載せた祭礼の山車が広範に普及する。まInuyama- Old doll x02た、寛文2年(1662年)には大坂道頓堀で竹田近江が「からくり芝居」(竹田からくり)を興行して有名になったと伝えられている。当時、尾張藩主・徳川宗春が「民と共に世を楽しむ」として遊興や祭を奨励したことから、尾張名古屋Inuyama- history x01には数多くの職人が住み着いて各種の「からくり人形」が作られるようになったともいわれる。人形師であった初代玉屋庄兵衛もその一人であった。こういった中で、犬山も山車カラクリ人形技術が発展し現在の大規模な大山祭りの化粧カラクリにつながっている。
Refer: (http://karakuri-tamaya.jp/history4.html)

 

<多様なからくり人形の形態>

からくり人形は、大別すると(1)「山車からくり」、(2)「座敷からくり」、(3)「芝居からくり」に分かるという。(1)の山車は、祭礼の際に曳かれる山車・車楽などにからくり人形を載せInuyama- Doll x05 Inuyama- Doll x27.JPG Inuyama- Doll x07演技させたもの、  (3)は、芝居小屋、歌舞伎などで使われるもので、後に、文楽や舞台回しなどに応用されている。 (2)の座敷からくりは、特に精巧な動きを示すことで有名で、大名や豪商の娯楽や愛Inuyama- craftsman x08玩用に製作された。「茶くみ人形」「弓引き人形」「文字書き人形」などの形がよく知られる。

(Performance can be seen in the YouTube *

 Inuyama- Doll x24.JPG“Tea serving doll” ( https://www.youtube.com/watch?v=1ZoFGCSFS1o )
Inuyama- Doll x23.JPG“Letter writing doll” ( https://www.youtube.com/watch?time_continue=5&v=U2HgAMT3dbk )

Inuyama- craftsman x02江戸末期、カラクリ儀右衛門と称された「田中久重」が、精巧なこれらの人形やカラクリ仕掛けを作ったことで有名である。田中は、後に、万年自鳴鐘万年時計(万年時計)、「無尽灯」、また、佐賀では蒸気機関車の製作に当たるなどして明治には製作事業を興している(現在の「東芝」の基となった「田中製作所」)。

<カラクリ人形と現代人型ロボットとの接点>

Inuyama- craftsman x03 そもそも、カラクリ人形などに使われる「からくり仕掛け」は、現代の機械工学にも通じる原理を備えていたと評価されている。「江戸Inuyama- Doll x09時代に”木”で精密な機械人形を創り上げたこの技術力が明治以降、西洋の”鉄”を使った新しい機会技術を導入する際、威力を発揮した」(鈴木礼二『からくり夢工房』2頁)。また、明治維新以降ヨーロッパからはいってきた新しい機械技術の受け皿となり、時計産業や加工工具、工作機械産業、織物機械、自動車産業へと発展した。(西尾武喜『からくり夢工房』4頁)。ちなみに、からくり人形作りが盛んであった愛知、名古屋周辺地方には自動車、産業用ロボットなどの企業が多く、この地方が工業製品の出荷高もトッInuyama- craftsman x05Inuyama- craftsman x09.JPGプクラスにあることとは、このカラクリが盛んであったことと無縁ではないとされる。
また、世界で唯一、人型ロボットに対して好意的イメージを持つ日本人のロボット観は「からくり人形」から生まれたものと見ることができるだろう。

 

<カラクリ館のからくり人形展示>

inuyama- Museum x01.JPG からくり展示館は、犬山市文化史料館の別館で、館内ではからくり人形の解説と実演や制作公開を定期的に行ってInuyama- Doll x08いる。この館を訪れることで、詳しくカラクリ人形のルーツやその多様な形態を見ることができる。

会場では、江戸時代から作られていた古いカラinuyama- Museum x05クリ人形のほか、大山祭りで使われる各種の「山車曲芸からくり」、精巧な動きを示す「座敷カラクリ」など、これほど多様なからくり人形が作られていたのかと感心する展示である。古い民話や説話に基づく人形、王朝貴族まとう人形、武者姿の人形、動物や子供の人形など内容は豊富Inuyama- Doll x06である。また、これらカラクリの構造や仕組みがよく分かるように人形の中の木組み、歯車、紐などがよく見えるように展示されているのがこの展示館の特徴の一つでもある。
しかし、最大の魅力は、江戸時代から続く人形師玉屋の九代目庄兵衛氏の、人形制作の現場と実演が実際に見られることである。九代目は、現在の名Inuyama- Doll x03工にも選ばれるからくり人形製作の名手で、有名な座敷カラクリである「茶くみ人形」、「弓引き人形」、「文字書き人形」などを昔の技法を駆使して再現し、現在の技術もくわえた姿で一般公開している。((2005年にはロンドンの大英博物館に「茶運び人形」を制作して寄贈している)まさにからくり人形の総合展示施設である。

♣ 訪問を終えて

Inuyama- Doll x24 「からくり人形」の制作技術と伝統は、明治以降の日本の機械工作技術と現代の人型ロボット産業に結びつくルーツのように評価されることが多Inuyama- Float x02い。特に、東芝を創立した田中久重が、江戸時代、名人といわれた「カラクリ人形師」であったこと、カラクリ人形作りが盛んであった愛知県周辺では豊田佐吉が木製の自動織機を発明したこと、などが思い出された。 このようなことから以前より精巧に作られたカラクリ人形には特に興味を持っていた。 今回、愛知県犬山で、国宝級の「犬山城」、江戸時代城下町の風情を残す町並みを見物すると同時Inuyama- Doll x11に、この「カラクリ館」を訪問し、多様なからくり人形の存在を知ったのは非常に有益であった。残念ながら九代目玉屋庄兵衛氏の実演は見ることはできなかったが、その作品を展示の中で身近に見ることができた。改めて日本の産業形成に結びつく、職人技の「匠」に触れることができたように感じた次第である。訪問を勧めたい歴史・産業資料館の一つである。

 

(了)

参照:

  • 「カラクリの基礎知識」http://karakuri-tamaya.jp/knowledge.html
  • 「からくりー伝統・歴史・技術ものづくりを支える」(尾陽木偶師 九代玉屋庄兵衛)http://karakuri-tamaya.jp/index.html
  • 「からくり人形とものづくり文化」http://karakuri-tamaya.jp/robot.html
  • からくりフロンティア http://karafro.com/
  • 「城下町でお遊びーKarakuri-」 (大山氏教育委員会篇)
  • 大山市城下町マップ
  • 大山市文化史料館パンフレット
  • カラクリ展示館パンフレット
  • 「旧磯江家住宅」紹介パンフレット
  • ドンデン館パンフレット
  • 「大山祭りーカラクリ解説集―」

 

 

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