日野自動車のトラック・バス博物館を訪ねる

 ― 日野の技術ルーツと現代の取り組みを知るー

Hino Auto- logo x01 日野自動車は、いすゞ自動車と並んで、日本でも有数の商用車専業メーカーHino Auto- overview x01で、トラック・バス車部門では世界的にも広いマーケットシェアをもつ。この日野自動車がトラック、バスに関する専門展示博物館として1997年開館したのが「日野オートプラザ」(東京小平市)である。今年8月、ここを興味を持って訪ねてみた。ここでは日野の100年の歴史を振り返り、歴代の製Hino Auto- overview x02作エンジン、トラック、バス、近年の商業車への取り組みなど日野自動車の発展史が詳しく紹介されている。
館内には、時代ごとの日野のトラック、バス、乗用車の実物、縮尺の模型とジオラマ、自動車開発の歴史や技術を示す写真・映像が一般にもよくわかるように順序立てて展示されていHino Auto- truck x05る。とりわけ館内に設置された回廊式フロアにある壁面パネルの社史展示コーナーは見事である。また、広い展示ホールには、日本初のトラックTGE-A(1917製作)、自社開発の航空機、ボンネット型のバス、乗用車コンテッサ、自働三輪車ハスラー、ダカールラリーの優勝車などが数多く展示されており、日野が多方面での自動車作りで活躍していたことが示されている。日野の技術を代表するものとして歴代エンジンの展示も目Hino Auto- history x02を引くものであった。中には、1930年代の黎明期の航空機エンジンも展示されていて興味深い。さらに、館内には社史資料室も設置されており、日野が、明治初期にガス灯器具メーカーとして創業し、後に自動車分野に進出して発展した経過も記されていて興味深い。 日本の自動車産業発展の側面史をみる上でも貴重な博物館であると思えた。

♣ 展示にみる日野自動車の黎明期

Hino Auto- illudt x08 今回の見学で、日野自動車が、明治初期の文明開化の象徴として登場したHino Auto- truck x06「ガス灯」の発火装置部品の製作に関わって、1910年「東京瓦斯工業」にルーツがあることを初めて知ることが出来た。そして、1918年には、陸軍の依頼を受け軍用自動車TGE-Aを開発、ここから日野の自動車事業がはじまっている。館内ロビーには、この象徴的なトラックTGE-Aの復元模型がかざられている。そして、会社は、しばらくの間「東京瓦斯電気工業」として、瓦斯・電気器具で事業を伸ばしていくが、同時に、軍用トラック車部門でも受注を受け生産力を伸ばしていく。1930年代になると国策にHino Auto- truck x07より自動車部門が分離、1941年には他社と合併し「ジーゼル自動車工業」、さらに「日野重工業」(1942)となり、戦後1946年に現在の「日野自動車工業」となっている。この瓦斯電時代から日野重工業にかけて、日野に技術開発を支えたのが当時自動車技術者として名をはせた星子勇氏であったという。館内の資料室には、氏を顕彰する資料室も設けられている。また、この前半期Hino Auto- history x04の車両、技術、事業の展開は、Hino Auto- person x01回廊展示の年譜、写真に詳しく記されており、また、主要展示フロアーには、トミカ製の瓦斯電から日野に至るミニカー車両が数多く並べられ日野の車両の特色と歴史がよくわかるようになっている(トミカタウン)。(注: 以下、日野自動車の前身「東京瓦斯電気工業」、ジーゼル自動車工業)を含めて「日野」と記述している。

♣ 展示からみる軍用トラックから商用車への道

Hino Auto- illudt x05 日野の自動車製作は、戦前、軍用車両が圧倒的に多かったが、民生部門Hino Auto- bus x03の自動車でも幾つかの進展があった。このうち特出出来るのはTGE-MP型乗り合いバス(通称ちよだバス)で1930年に製作された。このとき、汎用トラック、トレーラーなども製作されている。 しかし、日野が民間の商用車、特に、トラック、バスなどの分野に本格的に進出しビジネスを拡大してくるのは、戦後、1950年代からである。まず、トラックでHino Auto- truck x10は、1946年、戦中の車両部品を流用してつくったのがT10、T20の輸送トラック。そして、その改良型ボンネットトラックTH(1950)、1959年製作のTE10輸送トラックなどが次々に生産され事業の基礎が築かれる。このTE10の後継実車E11が記念車両として屋外展示場に展示されている。

♣ 展示にみる航空エンジンへの挑戦

Hino Auto- illudt x09 戦前の日野の自動車製造は、陸軍からの受注と支援が大きく関わっている。Hino Auto- truck x08先のTGE型トラック、RGE陸鉄高軌牽引車、装甲牽引車などの軍用車両が主な製作分野であったが、戦前の軍の要請で航空機エンジンの開発にも深く関わっていた。1928年には初の国産航空エンジン「神風」、そして「天風」(1930)、「光三型」(1936)、「初風」(1942)などの開発が確認されている。これらはいずれも太平洋戦争機に戦闘機エンジンなどとして活躍したものであるという。館内の航空エンHino Auto- engine x06Hino Auto- engine x05ジン・コーナーには、この歴代エンジンの実物が展示されており、当時の日野の技術水準をうかがい知ることができる。これらは、戦後、占領軍によって接収され、かつ開発Hino Auto- engine x01が禁じられていたことから、あまり外に出されることはなかった貴重なものである。また、吹き抜けのスロープギャラリーには、1938年製作の航空機「航研機」の五分の一模型が天井から下げられてあって興味深かった。

♣ 乗用車への参入を示す名車群

Hino Auto- logo x03 日野は、戦後、乗用車部門、特に軽自動車部門にも参入している。そして、Hino Auto- P car x011950年から62年にかけて幾つかの名車を世に送り出している。この間生産された乗用車がホールに展示されていて目を引く。日野ルノー4CV(1953)、コンデッサ900(1961)、同1300クーペ(1965)などである。また、東南アジア向けに輸出された軽量三輪自動車(1961)も会場に展示してあった。しかHino Auto- P car x03Hino Auto- P car x02し、日野は、1970年代以降、トヨタと業務提携を行って以来、乗用車の生産は中止し、トラック、バス部門の生産に集中している。

♣ 戦後のトラック事業とバス事業の発展

Hino Auto- truck x02 1960年代以降の日野のトラック、バス事業は急速に発展し、技術開Hino Auto- truck x11.JPG発と生産拡大も進んでいく。まず、トラック部門では、先に述べたTE型(1959)を皮切りに、KM300型(1966)、KG300型重量トラック(1967)、KL300型中型トラック(1969)、ハイキャップHE型トレーラー(1971)、FD172型レンジャー(1980)などが次々に市場に投入された。当時、戦後経済高成長の盛んな時期であり、物流の面で日野のトラックは大いに貢献したといえるだろう。輸送トラックで特に重要なのは高出力高能率高耐久力のエンジンでHino Auto- truck x03あると思われるが、日野は、この面Hino Auto- truck x04でも大きな技術発展を遂げている。館内には、これら開発した歴代のエンジン群が時代を追って展示されている。また、この時代の技術力を示すものとして、ダカールラリーで優勝した「日本レンジャー」(1996)参戦車の実物が屋外展示されており一見の価値がある。

<バス事業の発展>

Hino Auto- illudt x13.JPG 日野はバス部門でも大きな飛躍を遂げた。まず、1950年に生産が開始されたボンネットバスBH10。小回りのきく乗用バスとHino Auto- bus x04して各地で愛用されたという。この実車両が、仕様エンジンとともに館内ホールに展示されており訪問者の目を引いている。その後、フロアエンジンのモノコックBN型バス、スケルトン構造のRS型バス(19977)、観Hino Auto- bus x01光バスとして名をなした日野観光バス「セレカ」(1992)など、乗り心地とデザインに考慮したバスが次々と開発されている。これらのモデルは、館内のミニカー・コーナーでも確認できる。

♣ 近年の新型商用車、新型エンジンへの取り組みと成果

Hino Auto- logo x04 近年の日野は、技術力を背景に特殊車両、トラック、バスなどで多くのHino Auto- New car x02新しい試みを始めているのが展示にも反映されている。特に、1990-2000年代に入って自働車に対する環境、安全、コスト、デザイン面での関心が高まる中で、世界メーカーとの連携、時代に合った車のスタイル、技術力の向上を目指す姿が日野にも見られる。 まず、日野は、Hino Auto- New car x011994年から「ハイブリッドバスHIMR」を発売、2003年には小型トラック「日野ディトロ」を生み出している。屋外会場には、HIMRバスの実物、館内にはディトロのハイブリッドN04Cエンジン実物が展示されていた。また、現在、開発中の小型EV商用車プラットホームの展示解説、電気自動車コミュニティバス「ポンチョ・ミニ」のモデルカーが展示されていて興味深い。新時代をにらんだ日野の技術的挑戦の方向をみる思いである。

見学後の感想

Hino Auto- logo x02 展示の中では、日野自動車は、戦後、一貫してトラック、バスなどの輸送Hino Auto- overview x03車、乗合乗用車、特殊車両に技術を集中し、専門メーカーらしい特色と優位を維持してきたことをみることが出来る。しかし、背景には、明治以降、多様な機械部品やエンジン、航空機、軍用車両に関与しつつ技術の蓄積を高めてきた歴史的経過があったことが確認できる。この蓄積が、トラック、バスなどエンジン負荷が大きく、パワーと快適さ、安全性、省エネが追求されHino Auto- engine x02る現在の車両製作技術に生かされていることが展示でよくわかった。現在、内燃エンジンから電気、そして自動運転技術が求められる中、日野がどのように業態を気づいていくか興味のある課題であるとHino Auto- truck x01感じた。また。プラモデルメーカー「タカラトミー」と連携し、数々の歴史的メー車を忠実に再現するミニカー展示を効果的に博物館の展示に生かしているのも印象的である。

(了)

Reference:

  • 日野オートプラザ案内パンフレット(日野自動車)
  • 日野オートプラザ https://www.hino.co.jp/corp/autoplaza/
  • 「日野自動車の100年」(鈴木 孝)三樹書房
  • 「誇り高き日野自動車の技術者達」(日野オートプラザ・ガイド)
  • ⽇野⾃動⾞ – Wikipedia
  • 全国の⾃動⾞博物館 | トヨタ⾃動⾞のクルマ情報サイト
    ‐GAZOO https://gazoo.com/drive/museum/130826_12.html