所沢航空発祥記念館を訪ねてきた

      —   日本と世界の航空産業の歴史を探る記念館

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東京・所沢に日本の航空機に関する史料館があるというので先日行ってきた。名前Aviation M- outlook x01は「所沢航空発祥記念館」。日本初の正式な飛行実験を記念して1993年開館した施設で、「所沢航空公園」内に設けられている。記念館には、日本がこれまで開発・導入した航空機に実物あるいはレプリカが豊富に展示されており、日本の航空機産業の歴史をみるのに最適な施設である。また、世界の飛行技術の発展、日本の航Aviation M- outlook x03空史の展開、所沢飛行場の沿革、各種航空施設の概要などが詳しい解説されているほか、飛行施設のシミュレーターなども用意されていて一般の人も楽しめる。屋外には国内初の民間機YS-11なAviation M- outlook x04どの実物が展示されていて興味深い。広い航空公園内には、航空関係のモニュメント、緑地、スポーツ・文化施設などもあり、秋日の一日を楽しむことが出来るようになっている。

 

♣  航空記念館の展示概要

Aviation M- Illust x06      公園のメイン施設として建てられている「記念館」の広い一階展示ホールには、各種航空機を展示する「駐機場」、飛行機の歴史を語る「格納庫」、飛行科学を解説Aviation M- AirPlane x02する「研究室」、大型映像館があり、二階展示ホールには、所沢飛行場の歴史を示すパネル展示、飛行管制室の再現展示があるほか、飛行シミュレーター体験も出来るようになっている。
Aviation M- history x02 まず、航空機の実物展示では、日本で開発した「川崎KAL」、米国のレシプロ練習機「T-34メンター」、軽飛行機の「スチンソンL-5E」、航空自衛隊の中等練習機「富士T-1B」、「H-19 」、軍用ヘリコプター「H-21B- V-44」など約14機が展示してある。エントランスホールには1910年代に日本が制作した「会式⼀号機」のレプリカ、そして、二階には、日本で唯一の現存保Aviation M- AirPlane x04存機体である「九一式戦闘機」(航空遺産認定1号)が歴史遺産として陳列されている。
また、これらは、いずれもが日本の航空機史を示す貴重な展示品である。さらに、訪問したとき展示コーナーの一角には、1911年、日本で初飛行を果たした徳川大尉の肖像とともに、彼が登場した二翼の「アンリ・ファルマン機」が陳列してあり、日本Aviation M- AirPlane x07の航空史の幕開けを告げる展示となっていた。また、フランスのニューポール社が代制作し、1920年代、日本が練習機として使用していた「ニューポール81E2機」の実物大レプリカの展示も見られる。 館内の「研究」コーナーにある飛行機の歴史・技術、飛行の原理の実験装置も面白い展示であった。

♣   展示から見る日本航空機史の黎明

Aviation M- Illust x01 展示に見られるように「空」へのあこがれは昔から人の心をとらえてきたようAviation M- history x03だ。16世紀にはレオナルド・ダビンチが「飛行機状」のものを設計、18世紀には、フランスのモンゴルフィエ兄弟が熱気球による公開実験、その後、ドイツのリリエンタールがグライダーを制作・実験を繰り返している。そして、アメリカのライト兄弟が、1903年世界で初めて動力による飛行機を発明して航空機時代の幕開けを告げたのはよく知られる。 日本でも大空飛行の夢は強く、明治初期島津源造が気Aviation M- history x04球をあげたとの記録があるほか、二宮忠八が、1893年、鳥状の飛行体を作り有人飛行を成功させている。このプロトタイプ模型が、博物館に模型の形で展示されており興味深かった。 しかし、日本では、東京・代々木練兵場で徳川好敏大尉が試験飛行を行い、その後、2011年、所沢飛行場において「アンリ・ファルマン機」(フランス製)で日本初飛行を成功させたことが本格的な航空機の導入の契機とされている。このことから、館内の展示室には、同練習飛行の模型が展示されており、また、会場フロアにはファアマン機の実物復元機がモニュメントとしてAviation M- history x05設置されている。 これ以降、第一次世界大戦で航空機が大きな戦略道具と認識されるに従い、日本も、米英から多くの軍用機、偵察機を導入するとともに、自らの航空機開発に挑むことになる。この様子は、館内に展示された各種の航空機の実物・レプリカによく反映されている。このうち注目すべきは、欧米の技術を活用しつつ自己開発した「会式⼀号機」(1911)、「九一式戦闘機」(1927)などと思われる。しかし、圧倒的多数は輸入による軍用機で、民間機は少なく且つ技術的にもはるかに劣る時代が長く続いた。

♣   展示から見える太平洋戦争前後の航空機開発と産業

Aviation M- Illust x14 1930年代になると、政府は軍用機の戦略重要性から国内メーカーの育成に力Aviation M- AirPlane x10を入れ始める。 この中で、中島飛行機(現在の富士重工・スバル)、三菱造船(後に三菱航空機、現在の三菱重工)、川崎航空機(現在の川崎重工)などが航空機メーカーとして参入、機体やエンジンの開発を開始する。ただ当時はエンジニアも少なく技術的にも蓄積が少ないことから、欧米のライセンス生産や技術支援によるところが多かったといわれる。 しかし、太平洋戦争を踏まえて軍部による重点的な航空Aviation M- AirPlane x12機開発がはかられる中で、上記のメーカーの技術力・生産力は飛躍的に向上、各種の優秀な艦載機や戦闘機などが大量に生み出されるようになる。零式艦上戦闘機(いわゆる“ゼロ戦”)はその代表例とされている。記念館には、これらのうち「九一式戦闘機」(複葉の甲式四型戦Aviation M- AirPlane x08闘機、1931年、中島飛行機製作)の実機が展示されており、重要航空遺産に指定されている。 戦中、軍用機を中心に一時ピークに達した日本の航空機開発の一端を知ることの出来る展示であろう。

♣   展示から見る戦後の航空機産業の展開

Aviation M- Illust x09 1945年の日本の敗戦は航空機産業の壊滅をもたらした。飛行機工場、飛行場の全滅状態に加えて、占領軍は日本の軍事力再生を恐れて、航空機の製作、研究、運Aviation M- AirPlane x17航などすべてを禁じる措置をとった。航空機開発が実際に解禁されたのは1957年である。この期間の空白と技術的立ち後れは抗しがたく、日本企業は、防衛庁向けに米国製航空機のライセンス生産に細々と携わるに過ぎなかった。加えて、航空機産業はすでに大型航空機化、機種の多様化、ジェット機対応の時代に入っており、技術のキャッチアップは容易ではなかった。また、軍用機のみに傾注してきた戦前の技術体系は、シフトした民間航空機需要に応えることは難しかったことも事実である。
Aviation M- AirPlane x14 記念館に展示されている導入された戦後の軍用機、民間機の内容を見ても、このことがうなずける。例えば、自衛隊に配備された軍用ヘリコプターUH-1 Iroquois、”H-21B” V-44、などのほか、英国製の T-34 Mentorなど多数が見られるがほとんどが米英製である。この中にあって、富士重工が製作した自衛隊の「T-1B中等練習機」は、戦後初の実用国産航空機且つ初のジェット機でもあり、展示場にはその使用エンジンとともに展示Aviation M- AirPlane x01されていて目を引く。また、防衛庁へのPS-1飛行艇、C-1輸送機開発などを通じて航空機の自主開発が進んでいたのも事実である。

一方、経験のなかった民間用旅客飛行機の開発は当初非常に難しかったと思われる。しかし、民間航空機の需要増大を見込んだ政府は、1960年代、日本航空機製造(日航製、NAMC)を設立、この企業を軸として戦前の航空機メーカーと技術者を総動員して新しい民間旅客航空機の製作を模索する。これが戦後に初めて日本のメーカーが開発した旅客機のプロジェクト「YS-11」である。1962年に一号機が完成、全日空がAviation M- outlook x02受注して運用も開始される。その後、当機は1973年までに180機あまりが生産された。トラブルにも見舞われながらも唯一の国産旅客機として一定期間役割を果たし運航されている。航空記念館のある航空公園の一角にはこのYS-11機の実機が展示してあった。航空機製作の技術的難しさと国際競争の厳しさを示すものだが、日本の民間航空機製作への挑戦のモニュメントとして記録される展示である。

♣   展示から見えた現在の航空機産業の取り組み

Aviation M- Illust x05 当初の計画通りには運ばなかったものの、YS-11生産や輸送機C-1などの国産技術Aviation M- AirPlane x19の開発は大きな社会的役割を果たした。例えば、富士重工はF-3エンジンを搭載したT-4練習機を生産し、川崎重工はターボエンジン搭載のCX輸送機投入に成功している。一方、民間機部門では世界の状況には追いつくことが出来ず、各種のライセンス生産、国際共同プロジェクト参加という形で開発に携わることが続いた。しかし、最近になって、これまでの技術的蓄Aviation M- AirPlane x06積を生かして、国際競争力のある中型旅客機への取り組みがはじまっている。三菱重工のMRJやホンダビジネスジェットなどのプロジェクトがこれに当たるだろう。航空記念館では、日本の航空機開発の歴史を振り返ることに重点がおかれているため、これら新しい動きにはあまり触れていないのが残念である。

 

見学の後で・・・

Aviation M- Illust x08これまで航空機関系の博物館を訪ねたことがなかったので、初めて見る展示物が多く非常に勉強になった。特に、実物の航空機の展示を通して、世界の空へ向かAviation M- outlook x05った飛行技術の由来、日本の航空機開発の歴史を学ぶことが出来たのは大きい。ライト兄弟が初めて飛行に成功して、所沢で初めて日本で飛行機が飛んだときから約100年、今や航空機なしには人の移動や物流は考えられない時代にまで進歩している。今回、このルーツの一端を知ることが出来たのは大きな見学の成果であった。航空関係の博物館では成田の航空博物館などもあるので近いうちに訪ねてみようと思っている。

(了)

Reference:

  • 所沢航空発祥記念館(Tokorozawa Aviation Museum)HP: https://tam-web.jsf.or.jp/
  • https://ja.wikipedia.org/wiki/所沢航空記念公園
  • ⽇本の航空機産業 https://ja.wikipedia.org/wiki/⽇本の航空機産業
  • 飛行機の歴史 https://pub.nikkan.co.jp › uploads › book
  • 日本の航空機一覧 https://ja.wikipedia.org/wiki/⽇本製航空機の一覧
  • 航空の先駆者たちUNIPHOTO PRESS : uniphoto.co.jp/special/sky/
  • 日本の航空機工業50年の歩み:http://www.sjac.or.jp/data/walking_of_50_years/index.html
  • 中島⾶⾏機の栄光 https://gazoo.com/article/car_history/141017_1.html
  • 零式艦上戦闘機 https://ja.wikipedia.org/wiki/零式艦上戦闘
  • 会式⼀号機 https://ja.wikipedia.org/wiki/会式⼀号機
  • 初の国産旅客機「YS-11」は、どう生まれたか https://toyokeizai.net/articles/-/100217