ー写真の歴史とカメラ、感光フイルムの変遷を知るー
事務機やフイルム、カメラメーカーとして知られる富士フイルムが、東京・六
本木に自社のショールームと併せて「写真歴史博物館」を開設した。今回都心に出た折りに、ここを訪ねてみた。比較的小さな施設だが、自社のカメラ群、特にフジカなどの歴代モデルを展示するほか、内外の写真技術の発展を示す歴史コーナーがあって訪問者の興味を
誘う博物館であった。また、随時、写真展、フォート・ギャラリーなどを「富士フイルム・フォートサロン」として開催し、写真好事家の集まる場所ともなっている。写真が一つの市民文化となっていることを示す施設であった。この記事は、その訪問時の印象を記した。
○富士フイルム「写真歴史博物館」所在地:〒107-0052 東京都港区赤坂9丁目7番3号 (東京ミッドタウン・ウエスト)
HP: https://fujifilmsquare.jp/guide/museum.html
♣ カメラの成り立ちを語る「写真歴史博物コーナー」
写真機の成り立ちを示すパネルと歴史的な写真機のレプリカ、明治期日本の写真
撮影記録などが見やすいように丁寧に陳列されている。フィルメーカーらしく、写真感光版の技術変化が詳しく解説されている。
これらの幾つかを掲げると、19世紀フランス人タゲールによる「銀板写真」の説明とそのレプリカモデル、タルボットの「ガロ」タイプの写真機、日本で江戸時代に輸入されたカメラなどの初期のカメラの姿がわかる展示である。また、感光印画紙が銀板法からネガポジ印画法(ガロ・タイプ)へ、ガラス板によるコロジオン湿式方式、ゼラチンによる「乾板」、そして、1889年に
コダック社がセルロイドを使った「ロール・フィルム」を発明して現在に近い感光処理原理を確立していった歴
史を要領よくまとめている。また、江戸から明治初期にかけて日本人の間にどのように普及していったかの写真展示も興味深いものがある。「幕末・明治」著名人の肖像画や「横浜写真集」という白黒写真を彩色したものなど当時の写真画のありようも見られる。
♣ カメラ・フジカの進化とフイルム
この博物館コーナーの見どころは、フジのカメラの展示だけでなく、欧米の有名カメラメーカーのクラシックモデルが多数展示されていることである。コダックやイコンなど多くのクラシック蛇腹カメラ、ライカのLeika-Iなど写真で見るように豊富な展示である。今ではあまり見かけなくなった二眼レフの展示も珍しい。
富士フイルム自体の製造したカメラは歴代モデルが一望できる。その中でも、スプリングカメラの「フジカシックスIA」、コンパクトカメラの「フジカ35M」、レンズ付
きフィルムカメラ「写ルンです」、露光の自動化を図ったフジカ35オートM、8ミリ動画カメラのフジカ・シングルー8、デジタル時代のFinePixなど、時代を反映するフィルムメーカーならではカメラの実物が一覧できる。また、写真フイルム形態の変化を見るのも楽しい展示である。
♣ フォートサロンでゆっくり
カメラ展示と並んで、施設内にはフォートサロンが設けられていて、各種写真展が随時開催されている。筆者が訪れた際には、日本風景写真協会の風景写真展「四季のいろ」が開かれていた。この博物館のある富士フイルム・スクエアは六本木「東京ミッドタウン」の中にあり、ぶらっと寄って楽しむのも一興である。是非、訪ねてみてはどうかと思う。
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