新宿・四谷の「消防博物館」を訪ね東京の防災の歴史を知る

ー 江戸・東京の消防・防災の歩みを学べる貴重な博物館 ー

Fire M- logo x01 日本の火災と防災の歴史を扱う博物館が東京新宿の四谷にある。Fire M- Overview x02名前は「消防博物館」(東京消防庁)。阪神淡路大震災発生から25年、地震とこれを起因とする都市火災の被害の大きさを改めて考えさせられた。このこともあり、先日、この博物館を訪ねてきた。日本では古くから大火災が数多く発生し都市住民を悩ませてきたことはよく知られる。 江戸市街を見てみても、江戸時代には、江戸の町全体を焼Fire M- current x07Fire M- Illust x03き尽くすほどの大火が何回となく起き大きな被害をもたらしてきた。明治以降も依然として大規模火災は後を絶たなかった。これら火災災害に対し、日本、特に大都市東京では不十分ながらも多くの防火防災対策、施設整備が行われてきたのも事実である。 これを踏まえ消防博物館は、これまでの火事災害の実態を示すとともに、これに立ち向かってきた「消防」の歴史と制度・技術の内容など伝えることで、人々の防災意識の高まりを期待して1992年に設立されたFire M- Edo x02もの。博物館には、実際に使用した消防Fire M- Illust x19車両、機材、火災に関連したジオラマ、写真・絵図などが豊富に展示されており、防火防災制度の変遷、消防車両・機器の発展、現在の防火対策の内容などが詳しくわかる構成となっている。特に、江戸時代の火消制度や明治以降の消防体制の変化については、あまり知られていない内容も含み貴重である。訪問を通じて、日本、特に首都圏東京における火災との長い戦いと防災の歴史を知るには最適の施設であろうと感じた。 以下、見学した内容の紹介である。

 

♣ 博物館と展示の概要

Fire M- Illust x01 博物館の展示は、大きく分けて消防制度の歴史を示すコーナーと消防自動車などのFire M- Illust x18設備・装備面での変遷を示すコーナーがある。まず。歴史コーナーでは、「消防の夜明け」として江戸時代の「火消し」制度、消防の仕組み、火消し道具などの紹介があり、次に、明治以降の消防体制、消防器具の近代化、消火防災の仕組みなどが紹介されている。また、現在の消防の役割として、各種の消防自動車、救急車両、防災ヘリ、消防防Fire M- current x08災機材の大型実際車両の展示があり、その変遷と消防技術の発展が詳しく解説されている。そのほか、日常の意識を高めるための防災ラウンジ、ミニシアター、図書研修室などもあり幅広い。 火災ばかりでなく震災など大規模な災害や救急医療にも活動を広げている現代の消防活動の生の姿を示す有用な展示が並んでいるといえよう。

 

♣ 展示から見る江戸期の消防―火消し制度―

Fire M- Illust x12 日本の家屋・建物は多くが木材であったこと、人口の急増した江戸の市街地、特に、町人地は住居が過密で一度火事が起こると直ちに大火災につながる危険性Fire M- Edo x02が常にあった。江戸時代には江戸市街地の全域を焼き尽くす大規模な火災が何十回となく発生している。中でも17世紀初頭に起きた「明暦大火」では十数万人が死亡する事態となり、江戸全体が火の海となる大火災であった。これを境に、江戸幕府の手で大規模な市街地改革(例えば火除地設置や大規模な敷地換え)や体系的な消防体制が組まれることとなる。1650年には江戸に「定火消」が設けられ、その後、1712年には「大名火消」も生まれた。しかし、これらFire M- Edo x04は主として武家地を守るのが目的で火災対策としてははなはだ不十分だった。このことから、将軍吉宗の時代の1718年に町人による一万人規模の「町火消」を編成させている。この町火消は、当時の歌舞伎場面などにも街の頼もしい町人ヒーローとしてたびたび登場して来ることになる。

しかし、当時の消防方法は「破壊消火」と呼ばれるもので、Fire M- Illust x22現場消火よりも近隣家屋を壊して類焼をFire M- Illust x20防ぐことを目的としたきわめて原始的なものであった。博物館の展示では、この破壊消火の様子と火事の恐ろしさをジオラマで再現している。また、当時の防災機材、用水桶、「龍吐水」と呼ばれる手押しポンプなども展示されていて、当時の消火の姿を垣間見ることが出来る。また、Fire M- Edo x03「火の見櫓」を要所に設置し失火対策などの火災への警戒体制もとられていた江戸ではあったが、当時の制度や技術では大火を防ぐことが難しかった様子が伝わってくる。

 

♣ 展示から見る明治近代化以降の消防制度

Fire M- Illust x08 明治維新にともなって、「定火消」「大名火消」は廃止になり、「町火消」は東京Fire M- Meiji x09府に移管され、1872年に「消防組」に改組される。その後、消防組は全国的にも整備され効率的な消防組織として公的な組織として生まれ変わることになる(1894年)。  これにともなって、消防の組織、消火手段や方法、消防機材などの技術近代的が急速に進んだ。この様子は、館内展示に明瞭に示されている。例えば、蒸気ポンプを使った消火機、馬車引きFire M- Meiji x04消防車、消火活動の模型、錦絵による描写などである。そして、時Fire M- Meiji x05代が進むに従って消防体制はさらに整備され、消防自動車の登場、消防機材の進化の様子もみられる。
ともあれ、消防体制が単なる消火にとどまらず「防災」に巾を広げ、活動が大きく進化したのは「関東大震災」後である。展示でも、震災で活動する消防隊の姿がFire M- current x03ビデオで紹介されているほか、消防自動車や災害対策機材が増強、組織的な活動が広がっている様子が示されている。 戦後に入っては、高層ビルの火災や多様化する災害に対応して高度な「ハシゴ車」の登場、救急業務の開始、災害レスキュー部隊の組織化などが進み、近代消防への発展が進み今日に立っている。この様子は、消防隊員の装備具進化、変遷するはしご車の実車、消防バイク、消防ヘリ、救急車両などの展示に示されている。

 

♣ 消防自動車に見る技術発展

Fire M- Illust x04 近代化された消防活動のうち、装備面で特に技術発展で進展のあったのは「消防自動車」の登場と機能の高度化である。この推移は会場に展示された消防車両Fire M- Taisho x01に示されている。まず、東京都に最初に導入された消防自動車は「アーレンス・フォックス消防ポンプ自動車」(1924)と「スタッツ消防自動車」(1924)で、そのほかの歴代消防自動車とともに博物館に展示してある。主なものをあげるとマキシム消防ポンプ車(1929)、はしご車では、Fire M- current x09.JPGイベコ・マルギス、ベンツ・メッツ、いすゞはしご車などである。救急車両ではトヨタ製の救急車が車内を見学できる状態で展示してあった。ごく最近まで使われていた防災ヘリの展示も見ることが出来る。

 

♣ 消防機材に見る技術発展

Fire M- Illust x21 近代消防体制になってからの消防機材、消防服などの進化も著しく、展示の中Fire M- current x08でもその進展を見ることが出来る。まず、江戸時代の火消しの衣装、火消し道具の展示も、当時の消防の姿を反映していて面白い。明治になると衣装は洋風の活動的なスタイルになり用具も近代的機能的なものに変わってくる。そして、現在に近くになると耐熱防炎の完全装備へとさらに進化し、消火機械用具は非常に科Fire M- equipment x01学的技術的なものになっていることが確認できる。時代が移るにしたがって、技術面でも先進的なものへと整備が進み、消防組織が重要な社会防災活動として役割を果たすようになっていることが展示の中にうかがえる。

 

♣ 展示に見る現代の消防の姿

Fire M- current x04Fire M- Illust x23.JPG 現代の消防の活動は消火にとどまらず、救急、災害出動でも大きな役割を果たすようになっている。その重要な柱の一つに「災害救助隊」の活動がある。 「災害ヘリ」、「化学消防車」、「はしご車」、「救急車」などの装備がこれを支えている。また、近年では、防災教育啓発活動にも力を入れていることが展示にも示されている。博物館では、最近まで現役だった「消防ヘリコプター」をメインの展示とFire M- current x06Fire M- current x02して屋上とエントランスホールに展示しているほか、上記に述べたはしご車、救急車のほか、災害救助装備品を数多く展示している。また、防災ラウンジには、家庭や職場での防火器具、防災グッズとその使用法、防災の心構えなどを示す解説コーナーも設けられている。現在の消防署が、複雑化する災害事象に事後に対処するだけでなく、これらをどう事前に防ぐかに力を入れつつあることが示されているだろう。

最後に

Fire M- Illust x15 昔の職場が近かったこともあって、この博物館の存在は知っていたが訪問するのは今回が初めてであった。訪問して施設が非常に充実し展示も整ってFire M- current x11おりていることに改めて感心した。日本は木造家屋が多いため市街地では大規模火災に見舞われやすく最も重要な都市災害の一つであり、どのように立ち向かっていくかは昔からの重要課題であった。江戸・東京では江戸時代以降様々な火事対策を講じ、「火消し」組織を整備してきた、明治以降は、国の重要Fire M- current x12機関として消防署を設置して機能整備、防災活動も強化してきた。「消防博物館」では、これら歴史的な推移をわかりやすい形で示すことで、防災への社会的な取り組みの重要さを訴えている。今回の訪問で、現在の幅広い防災活動の実態と併せて、歴史的な対火災制度、防災技術の変化かなどについて多く知ることが出来た。防災意識を持つためにも貴重な訪問となった。

(了)

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