ー物流・運輸のルーツと歴史を探る珍しい博物館
♣ 「物流博物館」とは
古来より「もの」を「運ぶこと」は人類の最も重要な営みの一つであったと考えられる。そして、人間はこのために限りない知恵を絞ってきた。担ぐこと、牛馬を使うこと、車輪を使うことから始め
て、動力により「もの」を動かす手段をえることで近代産業を成り立たせてきた。こんなことを考えさせられる珍しい博物館が東京・品川にあった。名前は「物流博物館」。そこには、日本の中世から現代に至る物流技術の進化を伝える様々な展示品や史料が展示されている。私も時間を見てこの博物館を訪ねてみた。
それほど大きな博物館ではないが、日本の「運ぶ」技術の歴史に改めて感じ入った。
○ 品川「物流博物館」所在地:〒108-0074東京都港区高輪4-7-15
HP: http://www.lmuse.or.jp/index.html
♣ 物流博物館の概要
この博物館館内には、江戸時代から現代に至る物流の歩みを実物や模型、資料、説明パネルなどが丁寧に展示されている。また、物流の歴史に関する映像資料、ジオラマ、ゲーム施設なども豊富に備えていて、物流・運送の実態や変化
を肌で感じさせてくれる。この博物館は、1958年に日本通運株式会社社内に作られた「通運資料館」が基となっているという。その後、1998年に東京・品川で「物流博物館」として開館し公開されたもの。外壁が赤煉瓦で作られた二階建てのユニークな博物館である。この博物館には文書資料6000点、美術工芸品と実物資料役1200点、写真資料10万点、映像資料約200点が所蔵されているといわれ、順次公開展示されている。
館内は三つの展示コーナーにわかれていて、一階は日本の物流の歴史をたどる展示、二階は物流の映像の展示、地下一階には、現代の物流の姿をジオラマやパネルで示す展示となっている。どれもコンパクトながら優れた展示品が並んでいて興味は尽きない。
展示の内容を少し詳しく見てみよう。
♣ 展示の内容は豊富
<物流の歴史コーナー>
ここには江戸時代から人々はどのように「もの」を運ぶ技術と工夫を進化させてきたかを、実物、資料写真、模型、錦絵などで展示している。また、物流の歴史を示す詳しい年表なども展示されていて物流の時代変化がよくわか
る。江戸や明治時代の運搬用具(天秤棒、俵など)、運搬人足の装束、江戸政府の交易許可証、荷馬車や牛車の写真、そして、当時の物資集配所の模型などが並んでいる。また、時代が進んでのトラックや鉄道など古い時代から現代につながる物流を支えた運送システムの姿を彷彿させる。展示も豊富である。映像資料(ビデオ)ブースもたのしめる。
<現代の物流展示コーナー>
ここでは、動く模型を使った大きな現代の輸送システムのジオラマ展示が圧巻である、港湾、鉄道、トラック、航空ターミナル、コンテナ基地などの様子が朝から夜までの物流活動の風景として生き生きと表現されている。また、現在の物流に関するデータや写真、映像などがオンディマンドで閲覧できる。最新の物流管理システムの様子がわかる資料展示も興味深いものがあった。これらの展示を見ることによって、如何に現代のビジネスや社会生活が物流に支えられているのかがよくわかる。
<映像展示室とライブラリー>
物流に関する高慧海実施や映像を大画面で鑑賞するできる部屋も準備されている。現在では、「物流の歴史」「江戸時代の交通・輸送の仕組み」などのVTRも用意されている。図書コーナーは蔵書数はそれほど多くないが物流に関する文書や図書が棚に収められていて訪問者は自由に閲覧できる。
♣ 物流博物館を訪問しての感想
物流・輸送の問題は社会生活の中で最も重要な課題の一つであり、その智惠や工夫、技術の進歩は産業発展にとっても重要な要素であった。特に、グローバル化が進み、情報通信の発展の著しい今日の現代産業では、「物流」、効率的で便利、迅速、且つ安価なサプライ
チェーンの形成は企業競争力の源泉でもある。特に、物流のあり方は、貿易立国を目指してきた日本経済にとっては非常に重要であったと思われる。
しかし、この課題を体系的に紹介している施設や博物館は日本には余り多くなかった。この点品川にあるこの「物流博物館」は貴重な施設であるといえよう。もともとは日本通運の史料施設であったようであるが、一般に公開されるようになって現代生活における輸送、物流の重要性を改めて感じさせてくれる貴重な施設であろう。今以上に、多くの人が博物館を訪れ、輸送・物流の成り立ちや意味、現在の取組を理解してほしいと感じた。
(了)
Reference:
「物流博物館の収蔵資料」(2010)
「鉄道貨物輸送と小運送」(2013)
物流博物館New「鉄道貨物輸送の今昔」(2009)
物流博物館New「収蔵資料展」特集 (2001)
物流博物館について http://www.lmuse.or.jp/about/gaiyou.html