ブリヂストン博物館”Bridgstone Today”を訪ねる

”ブリヂストンToday”博物館を訪ねる

    –ゴムとタイヤの科学が学べるすごい博物館ー-

  ♣ 展示の概要

bs-illustx01タイヤ部門の世界メーカー・ブリヂストンが、その昔、九州・久留米の小さな「足袋」製造会社「志まや」から生まれことはあまり知られていない。このブリヂストンが創立70年を記念しBS-entrance x03.JPGて、同社の製品・技術を紹介するため2001年3月に設立したのが、この「ブリヂストンTODAY」博物館である。この博物館では、同社の創業以来の歴史、開発した技術の粋が紹介されているほ
か、タイヤの構造・機能・役割、先端的タイヤ技術、ゴム開発技術の成果、環境技術の進展などの展示が幅広くなされている。この博物館は、日本初のゴムとタイヤの総合技術博物館との評価が高く、企業研修も含めて開設以来すでに20万人以上の訪問者を数えているという。筆者も、東京・小平市にある「ブリヂストンTODAY」をこの秋訪ねてみた。タイヤは、自動車の動力bs-exhibit-tires-x01を地表に伝え、安全、快適に走行するための「足」であり、余り意識されていないが自動車機能の土台をなす中核装備である。そして、タイBS-F1 exhibition x03.JPG
ヤの技術開発は自動車以上に歴史も古く大切な技術が車の基礎部分を支えていることがわかった。

その意味でも今回の訪問は非常に勉強になった。このときの訪問記録である。

  ♣ 展示の概要

「ブリヂストンTODAY」は、小平市のブリヂストン社「技術センター」に隣接して建てられている。館内の一bs-illustx04-museum-pic階部分は、創業以来のブリヂストン社の歴史を紹介するコーナー、ブリヂストンの各種タイヤの展示、タイヤに関する基礎知識の紹介、FIレースの展示などが並んでいる。二階はゴム部品とタイヤの製造bs-structure-03過程、現在のブリヂストン新しい取り組みが紹介され、実演コーナーも設けられていて興味深い。また、地下階は、耐震装備としての「免震ゴム」の実物展示スペースである。

このうち、印象に残ったのは、歴史コーナーとタイヤ自体の構造や技術開発を表す展示コーナーであった。前者では、九州・久留米の小さな企業が、技術創造性にあふれた企業家によって技術開発の進化を通じて大企業に成長していく姿、後者では、タイヤの製造プロセス、技術的進化、将来への取組みへの科学解説的なアプローチが特に興味深かった。

展示内容と感想を記してみよう。

Museum URL:     http://www.bridgestone.com/corporate/today/

 ♣ ブリヂストンの創業と成長の歴史 – 人の足から車の足へ bs-illustx06 

<創業ものがたり>

エントランスホールには「ブリヂストン社の歴史」年表式に展示されている。ブリヂストン社の基となったのは、bs-history-panel-x01久留米で足袋の仕立業者「志まや」である。創業者は石橋徳治郎と正二郎、この石橋兄弟が一代でタイヤの大企業を育て上げた。このブリヂストンbs-history-chart-x01の名付け親も石橋で、名字の漢字「石」と「橋」結びつけ、Bridge-Stone としたのは有名な話である。「志まや」は、1907年に工場を建て足袋専業会社として創業したところ成功し、300万足もの売り上げをあげる事業の実績を上げる。その後、「志まや」は「日本足袋」と名を変え、ブランド名も「アサヒ」と替えて、今度は、足袋の底をゴムに替えて「アサヒ地下足袋」として売り出した(1921)。これは、当時九州に多くあった炭鉱の抗夫に重宝がられて売り上げを伸ばして企業の基礎を固める。

<足袋からタイヤメーカーに>

bs-ishibashi-x01この経験を生かし、当時の内外の自動車の普及をにらんでブリヂストンをタイヤの会社に発展させていったのが石橋正二郎であった。正二郎は、1931年に「ブリヂストン・タイヤbs-history-x01社」を創業し、ゴムの製造技術を利用して、当時輸入に頼っていたタイヤの国産化に乗り出す。まさに人間の足から車の足への事業転身であった。しかし、最初の頃は、技術的にも未熟で苦境が続いたという。しかし、欧米の技術を吸収しながら徐々に品質を向上させ、1932年には早くもフォード社の品質試験に合格して輸出も開始する。1940年代の戦時期にはトラックの国産タイヤの主要な供給者となっている。

<ブリヂストン技術開発の歴史>

しかし、本格的なタイヤ部門の技術企業として躍進するのは戦後で、タイヤコードにレーヨン採用(1951)、タ
bs-tire-x04-recent-prodヤのパターン研究、ナイロンタイヤの生産開始(1956)などで新領域を開く。まbs-history-x02-demingた、1968年には高品質を保証するデミング賞を受賞した。1960年代にはラジアルタイヤの生産にも取り組み、1970年代には「軽量スチールラジアルタイヤ」の開発(1975)、「高性能ラジアル“ボナンザ”」の製造(1979)、そして、80年代にはレーシングカー用の高性能タイヤの製造にも取りbs-f1-entry-x01組んでいる。bs-structure-04-radial
bs-tire-x02-potenza

 

 

<世界企業への飛躍>

bs-illustx12-logo さらに、1988年には、タイヤ部門の主要メーカーであった「ファイアストーン」を買収して世間を驚かせ、世界企業としての地位を不動にする。このころ、事業の多角化も進めており、bs-tire-x03-donuts社名も「ブリヂストン」と改めた。その後は、タイヤ基盤技術「DONUTS」の取組み、超大型ORPタイヤ、低燃費タイヤ「エコピア」の開発と進み、技術創造企業としてのブリヂストンの名は内外に定着している。また、事業の多角化も進めた結果、スポーツ用品、自転車などのほか、耐震建設のための「免震ゴム」構造物でも名が知られるようになっている。同社は、社会貢献活動にも熱心で、「ブリヂストン美術館」の建設や環境保護の「琵琶湖水プロジェクト」なども進めているという。bs-products-x01

こういった、創業から現在に至るブリヂストン社の社歴と事跡がパネル形式で展示されコーナーの中央に配置されている。訪問者は、これをたどることで企業としてのブルジストンの歴史に触れることが出来るだけでなく、タイヤの技術開発がどのように進められてきたかをブリヂストンの歴史と共に知ることができる。

♣ 多様なブリヂストン・タイヤの展示

bs-tire-exhibition-x01ブリヂストン博物館のメインとなる展示コーナーがこのセクションである。館内に入ると、ブリヂストンの開発した各種タイヤの実物が天井からと床面まで一bs-tread-pattern-x01
面に並べられていて見るものを圧倒する。特殊大型トラックに使われる巨大タイヤから、航空機のタイヤ、トラック、バス、乗用車の各種タイヤ、雪上車のタイヤまで、タイヤにもこんなに多くの種類があるのかと驚かされる。

bs-tread-pattern-x02次に目に入ってくるのは、タイヤの溝に刻まれたモザイク模様bs-tread-pattern-x03の展示。これはタイヤのトレッドパターンとよばれ、この刻み方によって走行の仕方が大きく変わるという。このバリエーションには驚かされた。これには幾何学的な力学の性質が応用されているという。新しい発見であった。

 

 

♣ タイヤの構造を示す展示

次は、タイヤの構造と役割の展示である。ここでは、タイヤの内部構造と材質が実物で示されている。タイヤbs-structure-01の構造は、表面がトレッドと呼ばれる表面構造、中間のベルトで強度を保つベbs-structure-x06ルト、内部はカーカスと呼ばれる骨格部分からなる。タイヤの種類としては「ラジアル構造」と「バイアス構造」があって、カーカスの配置が異なった形をとっている。また、従来は空気チューブが中心にあったが、現在は一体構造となっていてチューブは装備されていない。また、材質はゴム、ポリエステル、スチールなどで作るタイヤコード、ビートワイヤー、カーボンやシリカ、硫黄などの補強剤・配合剤からなっている。この組合せと材質によって自動車の用途にあったタイヤが作られていることを知った。大変勉強になる展示であった。

♣ タイヤの製造過程の展示

bs-production-process-x01タイヤの製造過程を示す展示も面白い。二階の一角は、このタイヤの製造過程がわかりやすく展示してある。タイヤの主原料であるゴムのbs-tire-material-x01配合、型だしからはじめて、カーカス部分とビートワイヤーの生成、そして、それぞれの結合と組み立てで様々なタイヤができあがる。これらの過程が実物とフローチャートで壁面いっぱいに展示されている。また、近くにはゴムの弾性や強度、ころがり度などの実演コーナーもあって、普段触れることの少ないタイヤの内部構造を知ることが出来る。

♣ ブリヂストンの新しい取組

bs-tire-x03-air-free次のコーナーでは、ブリヂストンの新しい技術的取り組みも紹介されている。リトレットという再生タイヤ、空気圧を使わないランフラットタイヤ、省エネ環境タイヤなbs-structure-02-cross-sectionどである。また、タイヤ以外の化成品、太陽電池に使うEVAフィルム、環境保全事業なども紹介されていた。珍しいものとしては、怪我で尾びれが使えなくなったイルカにつける「人工尾びれ」の展示があった。これはブリヂストの社会貢献の取組で作られたものだそうで、水族館から感謝状も贈呈されている。
bs-dorphin-x01bs-eva-film-x01bs-tire-x09-air-free bs-tire-x05-energy-saving

 

 

 

♣ F1 レースカーの特別展示と免震ゴム

ブリヂストンは、1990年代からカーレース用の高性能タイヤを製造しているが、優勝を果たしたF1レースのタ
bs-f1-exhibition-x01イヤ、レースカーの実物も写真と共に特別展示されている。これの展示はレースbs-rubber-x02好きの訪問者の人気も高く、ブリヂストンのタイヤ技術の優秀さ示すものとなっている。

また、ブリヂストンは、特別事業として耐震装備開発に90年代から取り組んでいるが、この成果として開発された「免震ゴム」設備が博物館の地下階に展示されている。地震の揺れを特殊ゴムと構造体で吸収する装置で、現在では多くビルで使用されているという。これも博物館の目玉展示コーナーで研修者bs-isolation-rubber-x01bs-illustx07を含めて多くの訪問者が見学に訪れるという話である。

 

 

 

♣ おわりに

bs-illustx09  この博物館は、「ゴムとタイヤの科学」の博物館と評されているが、自動車が現代社会になくてはならない交通インフラ手段となっている中で、この土台を支えているタイヤの存bs-illustx10在と技術の推移を、企業の発展とクロスさせながら展示し解説している貴重な博物館である。展示を見ることで、日本の企業がゴムやタイヤの技術の吸収と消化の中で世界的技術先進企業へ転身していく姿、タイヤといった基盤部品産業がどのように成り立っているのか、この技術進歩がどのような方向に向かいつつあるのかを認識させてくれる。非常に啓発的な博物館であった。時間が出来たらもう一度訪ねてみようと思う。

(了)

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参考とした資料:

「ゴムとタイヤの博物館」Bridgestone Today 案内パンフレット
「ブリヂストンTODAY Home Page」: http://www.bridgestone.co.jp/corporate/today/index.html
「タイヤの基礎知識」http://www.goodyear.co.jp/index.php
「ブリヂストンをもっと知るために」 http://www.bridgestone.co.jp/saiyou/recruit/company/about_us/index.html
「免震ゴム:「基本構造と製品ラインナップ」ブリヂストンhttp://www.bridgestone.co.jp/products/dp/antiseismic_rubber/product/index.html
「タイヤの話」服部六郎 大成社 A4判 本文233頁

 

 

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