東京・品川にあるソニーの「歴史資料館」を訪問

    ―技術先進メーカー・ソニーの歴史と挑戦を実感

♣ 歴史資料館にみるソニーのルーツ

Sony- Ibo 01 ソニーは戦後の日本を代表する電気電子産業のパイオニア企業である。終戦直後、すべての産業基盤が失われた中で、二人のエンジニアが小さな町工場「東京通Sony- Archives building信工業」を立ち上げ、その技術の革新性によって世界的な電気産業企業に育てあげた事跡は広く知られている。この足跡をたどる資料館がソニー揺籃の地、東京・品川に建てられている。名称は「ソニー歴史資料館」である。今年春、この資料館を友人と二人で訪ねてみた。施設はそれほど大きいものではなかったが、ソニーの開発した歴代の記念製品250点が創業時のエピソード共に展示されている。ソニーの技術開発の挑戦と歴史を確認Sony- Exh hall xxできるだけでなく、戦後日本の電気電子産業の盛衰と発展をみる上でも貴重な施設であることを感じた。以下は、この見学時の印象を記した記録である。(注:館内の写真撮影は禁止されていたので、掲載写真は、同社のWeb画像、パンフレットなどを利用している。

ソニー歴史資料館所在地 東京都品川区北品川6丁目6-39

♣ 歴史資料館の概要

Sony- Ilust x01 ソニー歴史資料館は、これまで戦後製作してきた代表的な製品群を、その技術開発の歴史とエピソードを交えてわかりやすく展示している貴重な資料館である。それほど広くはないスペースの中ではあるが、ソニーが創業者の理念が息づくモノづくりの技術Sony- historic cornerと精神が展示品の中にあふれているといえよう。この展示コーナーは、ソニーの創業時の映像「源流」、製品の「発想通史」、技術開発の「発想Hagi- Illust 02庫」、ライブラリーなどのブロックに分かれていて、訪問者が、それぞれの興味に基づいて見学できるようになっている。

 ♣ 創業の精神と源流

Sony- ibuka morita x2ソニーは、戦後間もない1946年、従業員数20名弱の小さな企業「東京通信工業」として設立された。このときの創業者は技術者井深大、盛田昭夫である。その時の設立Sony- First Factory workers趣意書には「真面目ナル技術者ノ技能ヲ最高度ニ発揮セシムベキ。自由豁達ニシテ愉快ナル理想工場ノ建設」と唱われていたという。戦後の混乱の中で生活を豊かにするための「技術」をベースにした先進的革新的な製品の開発に意欲を燃Sony- Declaration xxやしていた企業であったことがわかる。この「源流」コーナーには、このことをよく伝える映像、資料、ビデオコーナーが準備されている。筆者も、拝見させてもらったが、当時の時代精神とソニーの革新性に改めて感じ入った。

♣ 通史にみられる技術と製品の数々

Sony- historic cornerSony- Tape R 01 「発想通史」では、時代経過にしたがって展示の内容をソニーの企業としての発展の様子が系統的に展示されていた。ソニーがはじめて開発に成功した製品Sony- Radio TRは、1950年のテープレコーダーであった。続いて、トランジスターを使った日本発の「TR-55」の製作に成功し、社名もソニーと改め、企業としての基礎を築いている。この製品は、コーナーの最初に展示されている。

Sony- TV trinitoronまた、1959年にはポータブル・トランジスタ・テレビ、61年には世界初のVTR“SV-201”の商品化に成功している。テレビの技術開発は他社に比べてやや遅かったが、高品質をめざしトリニトロン方式のカラーテレビを市場に投入する。また、60年代後半、トランジスターを利用した電卓も普及しはじめたことから、この分野にも参入する。

70年代は家庭の電化製品が広く普及した時代で、ソニーもテレビ、ビデオなど技術開Sony- Betamax xx発が盛んに進められた。そのうちの一つがVTRカセットで、ソニーは「ベータマックス」を投入したが、ビクターのVTRと激しく争い撤退したということも起こっている(ビデオ戦争)。しかし、業界に先駆けたCCD利用の8ミリビデオも開発している。

Sony- Walkman xxなんといっても、ソニーの名を世界にとどろかしたのは、カセット利用の携帯用音楽プレーヤー「ウオークマン」の登場である。90年後半までに1億5000万台を売るヒット商品となっている。このプレーヤーの初期から次世代型まで時代を追って展示されていたのは興味深い。これによって音楽文化の楽しみ方にも革命的な変化がもたらされたという評価もなされている。

1980年代はデジタル時代となる。音響CDの開発に成功したのもソニーである。84年には携帯型CD、88年にはMO、92年にはMDを立ち上げてソニーの先進性を示した。PC開発に取り組んだのも同時期である。Sony- Ibo xy

また、エンターテイメント事業にも力を入れ、プレステやアイボの
robot x05開発を行ったのは90年代のことであった。また、PC市場でも「VAIO」シリーズを市場に投入している。2000年以降は目立った新製品の開発はなされていないが、デジカメ、ゲーム機、液晶テレビ「ブラビア」などで存在感を示している。

Sony- Playstation これら、ソニーの投入電気電子製品をみていると日本の電気電子産業技術全体の動向が、どのような方向で進んでいたかがわかる気がする。その意味でも、ソニー資料館の「歴史コーナー」は貴重な史料を提供している。

♣  ソニーの「発想庫」にみられるソニーブランドの方向性

このコーナーでは、ソニーがこれまで生み出してきた商品技術の特色と方向性を示す展示となっている。コンセプトでは、サイズ(小型軽量化)、デザイン(扱いやすさとスマートさ)、オリジナル(商品の独自性)の追求となっている。それぞれ、技術的にはTVやビデオでの軽量化とCCDの活用、デザインや機能ではラジオ、カメラ、オリジナル性ではウオークマンやエンターテイメント・ロボット、ゲーム機などが特色とあげられていて、納得させられる。ソニーの創業期から発展期までの精神がよく示されている展示コーナーといえようか。

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 ♣ 展示にみるソニーの将来像と日本の電子電気産業

Snoopyx02.jpg2000年代以降になると、技術大企業ソニーも後発メーカーの追い上げでかっての輝きにもやや陰りがみられるようになったのは、日本の電子電気産業全体にとってもSony- Illust strategy x01残念な事態である。しかし、これは産業のグローバル化と情報通信技術の革命的な変化の結果ともいわれ、この難しい中でソニーの創業時のモノづくり精神が今後どのように生かされていくのか興味が湧く課題である。このソニーの技術開発と企業としての発展がどのように進んでいくのか考えさせられた。その意味でも含蓄の深い貴重な歴史資料館であると感じた。日本の人々だけでなく、アジアの技術発展途上にある国の技術者、若者にも是非たずねてほしい産業資料館である。

(了)

¶ 参考にした資料:
1. ソニー歴史資料館 (Sony Archives) Pamphlet
2. ソニー歴史資料館利用案内http://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/Museum/map.html
3. ソニー:商品の歩み(http://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/sonyhistoryg.html
4. http://gizmodo.com/5245132/sony-product-timeline-is-a-glorious-gadget-history-lesson