オリンパス技術歴史館「瑞光洞」を訪ねる

光学機器の先駆者

オリンパス技術歴史館-「瑞光洞」-を訪ねる

Olympus Ilust 01 ♥ オリンパス博物館の概要

東京都八王子にある「オリンパス技術歴史館」は“光学機器メータとして発展してきたオリンパス社の光学技術の歴史的展開、特に顕微鏡、カメラ、内視鏡分野の技術的発展を内外に紹介する貴重な産業博物館である。この博物館は、同社が1920年代開発したカメラ用レンズ”瑞光“にちなんで、「瑞光洞」と名付けられ、当初は、社内技術者のための展示施設だったそうであるが、2013年に一般公開された。

Olympus New buildingオリンパス技術歴史館―瑞光洞―

〒192-8507 東京都八王子市石川町2951
オリンパス株式会社技術開発センター石川内
見学申込   予約制  (TEL:042-642-3086)

https://www.polyplastics.com/en/pavilion/olympus/index.html

♥ 「瑞光洞」をはじめて訪ねるみる

Nikon Illust x04 Camara and person  筆者は、今年春、この「技術歴史館―瑞光洞―をはじめておとずれたが、オリンパス独自のカメラ技術展示だけでなく、歴代の顕微鏡類、現在使われている工業用や生物・医療用の高性能Olympus Exb Hall 01顕微鏡、そして世界でも大きなシェアを占める内視鏡技術の進化を知ることができ、光学先端技術が社会の中で幅広く使用されていることを改めて強く認識した。同社の技術発展の経緯を知るだけでなく、日本全体の光学精密技術の発展をみる上で必須の技術博物館である。

以下に、オリンパス社の光学技術への歴史的取組と同社のカメラ、顕微鏡、内視鏡などを跡づける展示内容を紹介しよう。

(注) 館内の写真撮影は許されなかったが、同社のホームページやカタログなどによって取得した画像を補って掲載している。

 ♣ オリンパス社の創業と光学技術への取組

♥ オリンパス社の創業と名前の由来

Olympus Yamashita この博物館の「歴史展示コーナー」には、オリンパスの創業と技術の発展経緯が良く示されている。同社は、1919年、技術者であった山下長が、理化学機器の製造販売を手がけたことにOlympus Logo始まる。このときの社名は「高千穂製作所」である。後に社名はオリンパスと改めるが、これは「高千穂」という名称が、“神々の集う場所“(日本神話)→ “高千穂峰“(九州)であったことから、ギリシャ神話になぞらえて”オリンポス“→”オリンパス”としたもので、1920年代から長く光学機器のブランドネームとなっていたことによるとの話を案内者からうけた。

♥ オリンパスは顕微鏡技術で発展した

同社の技術開発は、当初、体温計と顕微鏡を中心に進められた。体温計については、後に「テルモ」社に譲Olympus Asahi-Go 1920渡されたが、顕微鏡開発では日本の第一人者として活躍する。この顕微鏡技術開発の成果を示したものが、1927年に製作された「旭号」である。(写真)。この開発成功が後に高千穂製作所の名を内外に示す契機となっている。Olympus Lens Zuiko 1938

1934年には.顕微鏡で培った光学技術を応用して写真レンズの製作も開始、1936年には、著名な“瑞光”レンズを開発する。このレンズを使用した小型カメラ第一号が「セミオリンパスI型」を発売である。これがオリンパスのカメラ事業参入のベースとなっている。

Olympus Illust 021940年代の戦時期には、軍の要請で光学兵器の製造に関わったが、戦後は民生に転じ、カメラ、顕微鏡の技術開発を進めると共に、1950年代には当時新事業であった内視鏡ガスト開Olympus Illust 03発に取り組み、60年代には、ファイバースコープを採用した画期的なガストロカメラ(胃カメラ)の製作に成功し、この分野でのオリンパスの名を世界に認知させるまでに発展してきている。現在では、医療系の内視鏡ビジネスは、同社の中心事業となり売り上げでみても7割を越えるようになっているという。

 

 ♣ 顕微鏡の展示と技術開発

 では、同社の技術の基礎となった「顕微鏡」の開発を、瑞光洞の展示を中心にみてみよう。

Olympus microscop Illst 03 ♥ 顕微鏡開発で最初の「大賞」を獲得”精華号”

前述のように、同社の顕微鏡は1920年の「旭号」であったが、その後、1925年には、改良Olympus Seika-go 1928型の「瑞穂号」、27年には「昭和号」が発表される。また、28年には、「精華号」顕微鏡を製作して「優良国産大賞」を受け、生物学に詳しかった昭和天皇も愛用
する名機となるなど、顕微鏡製作者としての地歩は揺るぎないものとなった。この昭和天皇使用の「精華号」は、後に、この博物館に寄贈され展示棚に飾られている。

また、目で観察するだけでなく写真も撮れる「万能顕微鏡スーパーフォト」(1938年)、大型双眼生物顕微鏡「瑞穂号LCE」(1935年)、戦後まもなく発表された「昭和号GK」(1946)、本格的な生物観察を行う倍率の高い「生物顕微鏡DF」(1957)、など年々進化した顕微鏡が制されている。これら顕微鏡の進化を示す「顕微鏡展示コーナー」は、オリンパスだけでなく日本の光学技術を跡づけることの出来る貴重な展示品である。

♥ 進化する高性能顕微鏡Olympus Stereomicro SZH

Olympus microscope FV1200また、現在は、生物観察や医療現場だけでなく、工業・産業用にも顕微鏡は広く使われており、新しい先端技術を使った「実体顕微鏡」も数多く展示されていて興味を引く。 1961年の「実体顕微鏡SZ」(1961)、高級実体顕微鏡SZH(1984)、工業用の「レーザー走査型顕微鏡LEXT」シリーズ、GXシリーズ(2001)シリーズもなどがこれに当たる。Olympus scan micro FV1000

さらに、生物・医療分野では、現代医療に必要な高感度顕微鏡の開発も、近年飛躍的な進歩をとげていて、展示品の中にみられる「倒立型生物顕微鏡」(1958)を初めとして、細胞内物質を観察する「マルチ測光顕微鏡MMSP」(1971)、生物学系向けの走査型顕微鏡「正立型LSM-GB」「共焦点レーザー走査型生物顕微鏡 FV1000」などがこれに当たる。素人にはわかりにくいものだったが、案内者の説明が的確で内容を理解できた。

♣ オリンパス・カメラの展示―コンパクトで高性能が特色

 ♥ オリンパスのカメラの歴史

私たちになじみのあるオリンパス製品といえばやはりカメラであろう。博物館内には、歴代カメラ・コーナーがあって、オリンパスが製作した全部の歴代カメラが時代順に展示してある。

Olympus camera Semi Olympus先に述べたように、オリンパスは1930年代に、ズイコー」レンズを開発してカメラ製作に着手しているが、この最初の製品が「セミオリンパスI型」(1936)(写真)である。そして1940年には「オリンパスシックス」(1940)、50年代には「オリンパスクロームシックスIIIA」(1951)と小型スプリングカメラを発売している。また、1952年には二眼レフカメラを開発、「オリンパスフレックスI型」(1952)して評価を得ている。Olympus camera Flex 1952

しかし、なんといってもオリンパス・カメラの評価を高めたのOlympus camera Pen 1959「オリンパスペン」シリーズで、初代機は1959年の誕生である。これはハーフサイズの小型・低価格・高品質カメラであり、これまでに1700万台を越えるヒット商品となっているという。

Olympus camera Pen series

また、1973年には一眼レフ・カメラの製作を発表、軽量で高画質のOMシリーズ第一号「オリンパスOM-1」を登場させた。これは当時世界最小軽量であったという。Olympus camera OM-1 このOM-シリーズは、その後改良を重ね1980年代まで製作された。また、ポケットカメラとして「カプセルカメラ」(1979-85)といった初心者用カメラも製作している。いずれも同社が開発したズイコーレンズを使ったカメラである。

デジタルカメラとしては、CAMEDIAシリーズがあり、初代機はCamedia C-800Lで1996年の発売である。また、ペンシリーズのOLYMPUS PEN Lite E-PL1s (2010)は、この最新作である。デジタル一眼レフも2000年代には登場して他社と開発を競っている。オリンパス初のレンズ交換式デジタルカメラは2003Olympus camera Pen Lite
年の”E-1”と名付けられ、2006年にはカメラ・ライブビュー機能を加えたE-330、現在、同社のフラッグシップ製品としてE-5 (2010)を投入している。

オリンOlympus camera E-5パスのカメラは、売り上げではニコンやキャノン、ソニーなどには及ばないが、小型で軽量、高性能という特色を生かした独自の世界を構築しているといわれる。また、これらのカメラ技術は、他分野、顕微鏡や内視鏡などに応用され成果を発揮している。

 

 ♣ 内視鏡の世界

 ♥ 見えない世界へのオリンパスの挑戦

Olympus Illust 03しかし、なんといってもオリンパスの独壇場は内視鏡分野における技術開発の優位性であろうか。博物館には、内視鏡の歴史展示コーナーがあり、このことを納得させてくれる。また、内視鏡外科手術の器具体験コーナーもあって興味が尽きない。

オリンパスが最初に内視鏡開発に取り組んだのは1949年である。東大病院の医師Olympus Gastro GT-Iと連携しつつ世界で最初に実用的な内視鏡施策に成功したのが1952年発表の「胃カメラGT-IJ」である。これまでの内視鏡は金属製の湾曲が難しい内視鏡であったが、開発された胃カメラは巻き取り可能な管を使った点で画期的なものだった。

Olympus Gastro Fiberscopeその後、1960年代には、光を屈曲させる新素材グラスファイバーを使うことで内臓の様子がリアルタイムで観察出来るようになる。この成果がオリンパスの「グラスファイバー付胃カメラ」(1964)であった。Olympus Gastro 01

この技術開発により、内視鏡は胃カメラだけにとどまらず真の「内視鏡」となって医療現場で活躍することになる。そして、Olympus endoscoe with CCD1970、1980年代には、進化したカメラとビデオ技術によって、内視鏡内にCCD(電荷結合素子)を使ったビデオカメラを組み込んだ「ビデオスコープ」が誕生し、記録・観察だけでなく医療行為にも活用するシステムができあがった。

また、2000年代には、世界で初めて「ハイビジョン内視鏡システム」も生まれ、内視鏡の概念が大きく変わり、きわめて微小な病変をも見逃さない精度の高い診断を実現出来るようになってきている。これらの技術開発を先進的に進めたのがオリンパス社で、これらOlympus endoscope capsule歴代の先端技術を応用した内視鏡の進化の姿をつぶさにみることが出来るは、オリンパス技術歴史博物館の魅力である。現在では、さらに進んで直径11ミリのカプセル内視鏡も開発されていて、このサンプルも博物館でみることが出来る。

Olympus endoscope Illust x02さらに、これら進化した内視鏡を使った手術や医療処置用の器具の技術も進歩しており、高性能顕微鏡などによる病巣や疾患の発見と併せて医療現場では内視鏡はなくてはならないものとなっている。この光学を使った視覚観察医療分野の技術進化の大きさと社会的応用の広さを感じた次第であった。

 ♣ 訪問の感想とコメント

 Olympus microscop Illust 02 今回、このようにオリンパスの光学機器、顕微鏡、カメラ、内視鏡、の技術の歴史的開発過程を見ることになったが、改めて思うことは、光学技術部門の社会的な広がりの大きさと、それを支える精密工学との統合性であった。人間にとって最も重要な「視覚」の物理的な拡大をレンズ、記録媒体の写真、ビデオスコープなどによって、本来人間の目では「見ることができなかったもの」を観察し、確認し、記録iNikon Illust x01 magesし、人間生活をより豊かにする科学の力の大きさであった。このことを今回の展示は実感させてくれた。また、オリンパスの光学機器開発の歴史にあるように、産業としても日本の精密工学が歴史的にも大きな役割を占めてきたことを実感させられた。

♥ 是非「瑞光洞」オリンパス博物館を訪ねてみよう

身近なアナログの世界からはじめて、惜しみない努力と研究によって徐々に進化してきた光学技術の今日までの展開を歴史的に確認してみることは、私たちにとって大切なこと考えるが、映像デジタルが当たり前になり、先端医療や微生物観察が普通になっている現代の若者世代にも是非推奨したい博物館の一つである。折を見て是非訪ねてほしい。

(了)

参考とした資料:

1.オリンパス社ホームページ:テクノロジー:オリンパスの歩み

 (http://www.olympus.co.jp/jp/corc/history/) 

2.オリンパス技術歴史館・ホームページ (http://www.olympus.co.jp/jp/technology/zuikodo/

3.「オリンパス技術歴史館―瑞光洞―」 案内パンフレット

「オリンパスのある世界」(オリンパスCSTレポート2013)

4.内視鏡の歴史(オリンパスメディカルシステム(株))http://www.gakuto.co.jp/web/download/rika197_7.pdf